インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア

インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア

時は20世紀のサンフランシスコ、一人のインタビュアーを前に己の半生を淡々と語るルイから映画は始まります。彼の紡ぎ出す物語たるや実に奇想天外なもので、彼の昔話は18世紀のニューオリンズ、吸血鬼レスタトとの出会いから狂い始めていくのであった……といったかんじのハートフル日陰者ストーリー。モンスターパニックムービーではなく、人間を糧として永遠に生き続けなければならないヴァンパイアの苦悩をつづった陰気で面白いお話です。最盛期のキルスティン・ダンストがいい味出してます。

「吸血鬼」という空想上の怪物にインタビューを行なう、というモキュメンタリー的構造がゆかいですね。この形式を転用し他にもいろいろな怪物インタビューものが作れそうです。

しかし、この形式が通用するのは狼男とかフランケンとか、そういった洋物モンスターだけかもしれないなあ。彼らはインタビューを行なうだけの価値がある深い悲しみを背負ってますもんね。そこにいくと日本の妖怪たちはちょっとキビしい。「楽しいな、楽しいな、オバケにゃ学校も試験も何にもない」という歌からもわかる通り、連中は悩みなどなさそうです。そもそもなんにも考えていないっぽく、インタビュー自体成立するのかどうかも怪しいものです。

インタビュー・ウィズ・小豆あらい

「どうして小豆を洗おうと思ったんですか?」

「うっせーな、洗いたかったんだよ!」

「小豆を洗っていて今まで何かよかったことは?」

「ねーよ! あったら今ごろみんな洗ってんだろ!」

「……」

インタビュー・ウィズ・傘化け

「傘化けという芸名の由来を教えてください」

「傘が化けてるからだよ! 他にねーだろ!」

「どうして傘が化けたんですか?」

「しらねーよ! 気がついてたら化けてたんだよ! うぜーよ!」

「……」

インタビュー・ウィズ・足長手長

「足長手長というユニット名の由来はどこからきたんですか?」

「足長と手長の二人組だからだよ」

「お二人はお互いのことをどう思っていますか?」

「手が長い奴だと思ってるよ」

「相方は足が長いといつも思ってるな」

「……」

インタビュー・ウィズ・二口女

「二口女さん、今日はよろしくお願いします」

「……」

「二口女さん?」

「バカモン、私は5分前に三口女と改名したんだ」

「知らんがな。しかし、三つ目の口は一体どこに?」

「ちょっとここめくってみ?」

「……あっ、下品!」

インタビュー・ウィズ・ぬらりひょん

「どうして若者たちから“ぬらりひょん”と呼ばれているんですか?」

「夕暮れ時の忙しい商家の座敷にぬらりと現れ、ひょんと消えるからじゃよ」

「そういったパフォーマンスを始めたいきさつは?」

「……」

「あっ、ひょんと消えた!」

インタビュー・ウィズ・くだん

「やー、やっと会えました、はじめまして」

「どうも」

「生まれたばかりの子牛が人語を発し、的中率100パーセントの予言をのこしてすぐに死んでしまう、ということですが……」

「このインタビューは、きっと失敗するんじゃないかな」

「えっ? ……あれっ、死んでる……」

インタビュー・ウィズ・かわうそ

「まず、あなたのお名前を教えてください」

「アラヤ」

「……。では、ご出身は?」

「カハイ」

「……」

インタビュー・ウィズ・河童

「河童さんの好物はなんですか?」

「キューリ」

「あなたは水辺の生き物ですよね。なのにどうしてキューリがすきなんですか?」

「じゃ、尻子玉」

「いいかげんだなあ。尻子玉って、人間の器官でいうとドコにあたるんですか?」

「見て、オレの指見て」

「えっ、なんですか?」

「ほら、オレの指、水かきがついてんの」

「はあ」

「ほら、オレの頭見て見て」

「はあ」

「ほら、皿がついてるよ」

「えーと、俗に『皿の水が乾くと力が出なくなる』などと言われていますが実際のところどうな……」

「ほら、今度はオレのおしり見て見て」

「質問を遮らないでくださいよ。なんなんですか」

「ほら、肛門が三つついてるよ」

「肛門が三……」

「お前サカナ好きか? この沼にコイいるぞ、でっかいコイ」

「だから質問を遮らないでくださいよ! ええ、好きですよ魚は」

「そうか、オレはキューリが好きだ。さらば。ジャプン」

「あっ、待てっ! なんなんだ」

どいつもこいつも、悲しみの欠片すらありやしません。他にも枕返しとか豆腐小僧とか、なんにも考えてなさそうな奴ばっかり。枕返しの過去をインタビューでほじくり返して、一体どんなドラマがあるというんだ。