2019年4月17日

松江しんじ湖温泉を旅する

そのとき私が乗っていた二等車には、大事そうに風呂敷包みを抱えた年齢不詳の一人の紳士を除いて乗客はなく、いま思い返してみると実に不思議なことではあるが、列車ボーイや車掌さえ一度も姿を表すことはなかった。「これでございますか」僕の好奇の視線に気づいた紳士は、抱き抱えていた風呂敷をほどき、中から現れた額のようなものを窓の所に立てかけた。額の中には一尺足らずの大きさの娘の半身が浮き出ており、その娘は何とも […]