岩魚坊主

深山で無法ヤンチャなプレイスタイルの釣りに興じていると現れる妖怪。

ヤンチャなプレイスタイルの釣りといっても禁漁区での密漁とかガチン漁とかいろいろありますが、例えば「毒もみ」という漁法がありますね。山椒の皮かなんかを川に流すと周辺の魚がすべて死ぬのでラクして魚が獲れるそうです。

あるとき村の若い衆が毒を川に撒き散らしまくってゴキゲンな乱獲に興じていると、どこからともなく坊主が現れて「そんなことはやめるぞな」とヤングに説教たれ始めるわけ。ヤングどもはういーっす、あざーっす、ちょりーっす、などといった全く心のこもっていない生返事で坊主をやり過ごそうとするのだけれど、そんなことは坊主もお見通しで、その場をなかなか立ち去ろうとしない。そこでヤングどもは一計を案じます。彼らは坊主の懐柔をはかり、乱獲パーティーのときに食おうと思っていた弁当を差し出すと、しかめっ面だった坊主の顔はパッとほころび、

「小生、まずはにぎり飯を一口。……むむむ、これぞまさに腹キュンの妙味！ うまいぞな。冷めてもおいしい卵焼きもこれまた絶品ぞな。小生を唸らせるとは……オヌシ只者ではないナ（笑） アクセスの悪い深山にある店ではあるが、後日の再訪を固く誓う小生であった。しかしスタッフの接客にやや難ありだったため、★は3とさせていただく所存。今後も精進するナリ、チ〜ン(･∀･)」

みたいな、上から目線のイラつく食べログレビューみたいな感想をのたまうのでした。しかしまあ、こんなに美味しい弁当をふるまってくれる青年たちが毒もみのごとき残虐行為を行うことはなかろうということで、食べログ僧侶は笑顔で立ち去って行ったのであった。

うるさい坊主がいなくなったところで、若者たちは再び邪悪な笑みをたたえ毒の散布を再開。おきて破りの毒もみ漁法でその日はたくさんの魚を獲りまくったものでしたが、最後にプカリと川面に浮いた獲物が特に凄かった。なんと六尺(1.8メートル)はあろうかという巨大イワナ。大漁マッドヤング軍団は喜び勇んでタキタロウ級の巨大魚を村へと持ち帰り、調理のために腹をかっさばいてみたところ、先ほど連中が坊主に与えた弁当が中から出てきたのだそうですよ。マッドヤングたちは「きっと川の主がお坊さまの姿となって現れ、僕たちの無益な殺生を戒めようとしたのだね」「宗教者に変装して無法者を説得するとは、発想がキン肉マンソルジャーとまったく同じだね」などと口々に言いあったのだとか。