赤頭

赤頭

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・鳥取県。西伯郡は名和村というところに近接パワー型の男、赤頭がすんでおりました。「力」のタロットカードが暗示する彼の能力は「怪力」。第3部並にシンプルな能力だぜ。やれやれだぜ。

そしてッ! とある文献によるとよォオ〜〜ッ、米俵12俵をまとめて持ち上げるほどの『怪力』だったというゼェェ〜〜ッ!(ジョジョ文体)

赤頭ことレッド・ヘッド・チリ・ペッパーが観音堂に座ってひと休みしていると、どこからともなく4、5歳ぐらいの男児が現れました。そして素手で五寸釘を観音堂に打ちつけて怪力ぶりをアピールするものだから、力自慢のレッチリは大人げなくもカチンときました。それがどうしたとばかりに勇んで五寸釘チャレンジに挑むのですが、これが意外に大変で、なかなか釘が刺さらない。それでも彼は深く深呼吸して丹田に気を溜めると、「♪Solders! Keep on warrin’!」と歌いながら両手で必死こいて釘を柱に突き刺すことに成功し、そしてドヤ顔でガッツポーズを取りました。「どうだ、次は貴様の番だぞ?」とばかりにアゴをしゃくるレッチリ。それを受けて男児はふたたび釘を打ち始めたのですが、よく見るとこの小僧……なんだァ〜〜ッ!? 指を一本しか使わずに釘を打ちつけているぞォオオオオ〜〜〜ッ!

「どうして……どうして『一本』だけなのよォオオオ〜〜〜〜〜〜〜ッ!!』

と、それを見て山岸由花子ばりに悔しがる赤頭。さらにこの小僧、打ち付けた釘を軽々と抜いたり、そしてまた刺したりを造作なくこなしており、もはや二人の力量差は明らか。かくて敗北感に打ちひしがれるレッチリおじさんをせせら笑いつつ、童形の妖怪は何処かへ立ち去っていったのであった。

とまあ、こんなかんじの話が伝わっているわけです。要するに「赤頭」というのは妖怪の名前ではなく、妖怪を目撃した力持ちおじさんのことなんだね。しかし巷間の妖怪事典の多くには「赤頭」という名前でこのエピソードが収録されているので紛らわしい。猪木の開発したキックなのにアリキック、みたいなややこしさがありますね。

まあ、このレッチリおじさんにも妖怪らしい一面はあって、この人が亡くなったあとに地元の有志が彼の超パワーにあやかろうと彼の墓を巡礼するようになったのだそう。そして夜になるとラジカセで名曲「Dani California」を大音量で流してみんなでクネクネ踊ったりしていたのですが、あるとき突然彼らの背中が重石を載せられたかのように重くなり、まるで康一くんのスタンド攻撃を受けているかのようだったとか。きっとうるさかったんでしょうね。