石妖

石妖

昔むかし、伊豆山中での出来事じゃったと。

山奥で数人の石工が石の切り出し作業を行っていました。昼下がりの休憩時、缶コーヒーのジョージアを飲みながらだべっていると、どこからともなく場違いな服装の女がやって来たので一同おおいに驚いた。やや垂れ目ながらも二重の大きな瞳、そしてボリューミーな唇にセミロングという石原さとみのような容貌の女は、男好きのしそうな舌足らずな声で「てか、マッサージにきたんですけどー」みたいなことを言うわけ。石工たちは「えっ、誰かデリバリー頼んだの?」「何分コース?」「どこまでOKのやつ?」「延長はできるの?」「ねえ、どこまでOKのやつなのですか?」などと真剣な剣幕で互いに尋ねあうのですが、しかしそんなサービスを頼んだ者はおらず、そもそもこのような深山幽谷がそういったサービスの提供エリア範囲内であるはずもない。なんという怪奇。

しかしまあ、若い娘が揉んでくれるというのをむげに断る道理もないだろう。据え揉みくわぬは男の恥、というわけで石工たちはこの怪しい嬢に按摩をしてもらうことにしました。

そしたらもう、あれですよ、この嬢のテクニックがもんのすごくてね。揉まれた客はあまりの気持ち良さに尻子玉を抜かれた6期鬼太郎状態となり、すやすやと入眠してしまうのでした。

嬢のテクによって次から次へと果ててゆく仲間たちを見た石工の一人はこれを大いに怪しみ、その場をそっと離れます。そしてたまたま近場で狩りをしていた猟師と出くわしたので事情を話して相談すると「それはおそらく狐狸の類なので、ダーティーハリーみたいに即発砲して殺そう」ということになりました。猟師を連れた石工は採掘場へと取って返し、かくして放たれる猟師の一撃。44口径の弾丸が嬢の体を貫くと同時に、石の割れるようなカチーンという音が山中に響き渡りました。二人が駆け寄ったときには既に嬢の姿はなく、ただ割れた石のかけらが散乱しているばかり。おそらくは石の精が人間の形を取り、石工相手のよからぬサービスを企んだものだったのでしょう。

ちなみに、嬢のサービスを受けた石工の背中には石で引っ掻いたような傷がたくさんついていて、これがなかなか治癒せず、薬物療法を用いてようやく平癒。なまはんかな性病なんかよりもよっぽどタチが悪かったのだとか。

石工たちは「信用のおける店以外の嬢に手を出すと痛い目に遭う」といって、その後はチャレンジャブルな遊びを控えるようになったそうな。めでたしめでたし。どっとはらい。