ゲドガキのバケモン

ゲドガキのバケモン

五島列島にある一家が住んでおりました。その家には丑松という幼児がおりまして、この子が夜中にハットリシンゾウみたいに泣きくさるため、父親が「そんなに泣くと、父さんはおまえの養育権を放棄したうえ、さらにゲドガキのバケモンに食わせちゃうよ~」とてきとうなことを言って脅したんだそうです(ゲドガキというのは近所に実在する地名)。

そしたら家の外から「よっしゃ来い、俺に食わせろ!」という声が響き、ゲドガキのバケモンが屋内に乱入。まさかマジでGGBがやって来るとは思いもよらなかった父親はある意味丑松よりも驚き、「あっ、はい。ようがす。でも、ま、こいつが大人になったらね~」と、思わずてきとうな返事をしてしまうわけです。

そして数年後。阿呆の丑松も阿呆なりにきちんと成長しました。何の用事があったものか、酒樽を背負った丑松がゲドガキ近辺を歩いているとGGBが再登場。「お前の親父にお前を貰う約束をしているのだ」なんてこと言って猛然と襲いかかってくるわけです。しかし丑松は酒樽をしょぼいヒモでゆわえて背負っていたのが幸運でした。樽にしがみついたGGBの怪力で縄がぷつんと切れたものだから、その隙に丑松は丑松ダッシュで逃げて無事生還。家に帰りつき、本当に良かったと家族で喜びあったものでした。

だけど丑松はしょせん阿呆なので、なんの学習もせずに同じことを繰り返します。すなわち、夜に酒樽背負ってゲドガキ近辺を歩くという行動をまんまトレースしてしまう。しかも丑松は過去の経験から余計なところだけ学習していて、あれ以来めっちゃ丈夫な麻縄で酒樽を縛って背負っていたものだから、今度はGGBからうまく逃れることが出来ず、ぶっ殺されて食われてしまったのでした。

家では、その日も親父がぷらぷらしていて、回覧板を持ってきた隣家のお嬢ちゃんに「キミ、笑顔になると笑ってるように見えるね~」「キミ、クレオパトラに似てるね~。ま、オレはクレオパトラに会ったことはないけど」などといった高田純次風てきとう発言をあいも変わらず乱発していたのですが、丑松を食い終わったGGBが「お前の息子を完食したぞ」とわざわざ報告にやってきたので、それにはさすがにびっくりしたのだそうです。

あんまりてきとうすぎると息子が食い殺されかねないのでみんなも気をつけようね。そんな教訓がこめられている話かと思われます。