家に帰るとコクワガタが必ず死んだフリをしています。

家に帰るとコクワガタが必ず死んだフリをしています。

もう重陽の節句も過ぎたというのに、7月から飼い始めたカブトムシとコクワガタたちは今なお元気に生きており、けっこうびっくりしています。

僕が小学生だった頃も毎年カブトムシを飼育していましたが、毎年毎年わりとすぐ死んでました。夏休みが終わってもカブトムシが生きていることなんて皆無でした。いま飼っている虫たちが長生きなのは僕の飼育スキルが高まったわけではなく、さまざまな外的要因によって飼育しやすくなっているということなんでしょうかね。

昔はスイカやキュウリが彼らにとって最上のごちそう、小学生当時の僕にとってのカルビーポテトチップス(のり塩味)みたいなもんだと考えせっせと与えていたのですが、現在出回っている飼育書を読むとスイカなどは水分が多すぎてカブトムシにとってはむしろ害と説かれていますね。まるで代謝の落ちた現在の僕にとってのカルビーポテトチップス(のり塩味)のようなものではないか。毎日ポテチばっかり食わされれば、そりゃあ早死にしますよね。悪いことをした……。

飼育かごに敷く腐葉土の進化も素晴らしいです。あっ、いまは腐葉土ではなくマットと言うんですね。なんでですかね。腐女子とかに配慮した言葉の言い換えですかね。そういう言葉狩りみたいなことはよくないですね。

さておきマットです。ふつうの腐葉土で飼育していたときは、地獄から蝿王ベルゼブブが召喚されでもするのかしらっつーくらいコバエが湧きまくって多大なストレスを感じていたのですが、「コバエが湧かないマット」というのを購入してノーマルマットと入れ替えてみたところ、マジで一匹もいなくなったので感動しました。こんなに素晴らしい商品が世の中にあったなんて……土葬の風習が遺る土地で僕が死ぬこととなったら、亡骸は「コバエが湧かないマット」に埋葬してほしいくらい感激しました。

カブトムシたちが長生きしている要因その3。
僕は子供のころ雛見沢村みたいな寒村で暮らしていたので、カブトムシなんかそこらじゅうにいて、能動的に採りに行くようなことはほとんどありませんでした。ラジオ体操の帰りに道ばたで見つけた個体を気まぐれに飼育したりしていたかんじなのですが、今になって考えてみると、彼らは道ばたで僕のような愚昧な子どもに見つかる時点で既にけっこう弱っていたのでしょう。

というのも、今回はじめて飼育キットで幼虫から飼育を行ったのですが、羽化したばかりのカブトムシを見てあまりの移動速度の速さにびっくりしました。速いのなんのって、ヨロイとベルトとひさしを取ったロビンマスクぐらい速いわけ。カブトムシに対する「鈍重」という数十年来のイメージが覆されました。それどころかなんかゴキブリみたいにカサカサ走り回るので、ゴキブリ嫌いの僕はおはぎに針を入れられた圭一くんくらい激しくおびえてしまいましたよ。

3ヶ月も飼っていると長男のほうはまぁまぁ飽きてきて、カブトムシよりもレゴスーパーマリオとかのほうに興味の対象が移りましたが、虫を偏愛する次男(保育園での様子が記される連絡帳には虫やヤモリとの交流エピソードばかり書かれている)のほうは飼育かごの置かれた玄関前で一日の大半をすごすこともあり、野放しにすると家屋を破壊しがちな次男の動きを止めるという効能において彼らは大いに家庭の役に立っているのであった。ありがとう。

しかし、こんなに長く同一個体の甲虫を飼育しているとけっこう情が湧くものですね。最近は、家に帰るとコクワガタが必ず死んだフリをしています。毎回びっくりしてしまうのですが、この行動は一体なんなんだ。榮倉奈々主演で映画化を狙っているのか。映画化しなくていいからとにかく長生きしてくれ。