つらら女

つらら女

アガルマトフィリア(人形偏愛)
ズーフェリア(動物性愛)
フォーミコフィリア(昆虫性愛)
オフィディシズム(爬虫類性愛)
アヴィソドミー(鳥獣性愛)
ミクソスコピック・ズーフィリア(動物の性行為をのぞき見て興奮する)
デンドロフィリア(樹木性愛)
ヒエロフィリア(聖物性愛)
スペクトロフィリア(霊体愛好。神や天使との妄想にふける)
マシン・セックス(機械性愛。愛車のマフラーといたしたりする)
サイドロドロモフィリア(列車性愛)
ピロラグニア(火炎にグッとくる)
エストペクトロフィリア(鏡に映ったものに性的興奮を覚える)
スードウズーフィリア(疑似獣姦。ネコ耳に絶賛大興奮)

等々。世間には同種同族のホモサピ以外の存在に性的興奮をおぼえる倒錯者の方々がたくさんいらっしゃいますね。たとえば君なんかもご多分に漏れずネコ耳大好きなスードウズーフィリアだったりするしね。まったく。親が泣きますよ。

めくるめく異常性癖の世界。少し珍しいところでは、かつて日本の東北地方にはつららを見て興奮するという奇態な百姓が棲息していたそうです(シガマフィリア)。

百姓は軒から垂れるつららをひねもす眺めては「あー、あのつららとイチャイチャしてーなー。あの尖った先端部をおらの✕✕に✕✕したり、根本の太い部分で✕✕したり、おらの熱い体温で溶けてほとばしったつらら液を✕✕に✕✕して✕✕してーなー」といったエロい妄想を繰り広げていました。何を考えているのか余人にはもはやまったくわかりません。

ある晩のこと。変態百姓ハウスの戸を叩く者がありました。軒先に立っていたのは氷のように透き通った肌の美女で、開口一番「婚活中でーす、めとってくださーい。得意料理はつらら、趣味はつらら、休日の過ごし方はつららでーす」みたいなことを言うわけ。見てくれの超絶美しさもさることながら、かなりつららに寄せてきたプロフィールに運命を感じた百姓は結婚を即断。なんとこの男、実はつららも女性も両方いけるというバイ百姓だったのです。

ところがこの美女妻、なぜか風呂に入るのをものすごく嫌がる。これにはさしもの変態百姓も困ってしまいます。

「たしかにおらは変態だ」
「うすうす気づいております」
「だが、垢のたまった汚い体に興奮するような嗜好は持ち合わせてねえだよ」
「はあ」
「変態にもいろいろあるだよ。おらはおめえのつららみてえに冷てえ肌とつららとを重ね合わせて欲情しようっちゅう変態だから、きちんと風呂さ入って垢を落としてくれねえと、つららのような透明感のある肌を存分に楽しめねえだよ」

などといった変態的見地から女房を説得し、夜の営みの前に彼女を無理やり風呂に入れたのでした。

女房の入浴中、百姓は軒先のつららをいやらしい目つきで眺めることで精神テンションを高めていたのですが、それにしても女房の風呂が長い。かれこれ1時間以上は経っている。じらしすぎだ。待ち切れねえだ。もういい。風呂で開始しちまおう。そう考えた変態百姓が風呂場に闖入したところ、不思議なことに女房の姿はなく、浴槽には女房の櫛と氷のかけらだけがぷかぷかと浮いていました。これには変態百姓も大ショック。なんと女房の正体はつららの妖怪変化で、お湯の熱さで体が溶けてしまったのだね。

とまあ、世の中は性的倒錯者が報われないように出来ているわけですよ。だからきみもほら、いつまでもネコ耳ネコ耳と騒いでいたところでどうしようもないじゃない。そろそろ現実と折り合いをつけよう。しっかりするんだ。