門付! ぐるぐる港区

門付! ぐるぐる港区

門付の旅より帰ってまいりました。

いつもは東北や裏日本を中心に漂泊する我ら世間師一家ですが、東北や裏日本の寒村はどこも貧しいため貰える祝儀も少なく、新型iPadとApple Pencilを買うためにはもっと実入りの良いところを回らなければ、ということで東京23区平均年収ランキング第一位の港区を重点的に漂泊してきました。

しかし港区はだめですね。港区には人情というものがない。門付をしようにも、タワーマンションに住む港区民はオートロックの先に我々をなかなか招き入れようとはせず、あるいはエントランスでモニターカメラ越しに芸をさせたあげく一方的に遮断するなど、港区民には血も涙もない。港区民には心というものがない。あるのはただ高額な年収だけである。

とある港区民は室内まで招き入れてくれたものの、我々の芸を見たあとでスマートスピーカーから我々が唄ったのと同様の小唄を流して「金は恵んでやらないこともないが、こちらのほうが聴き甲斐があるね。音質も良いし」などという始末。忘れられた日本人が手ずから演奏し歌い舞い踊ったというのに……これだから物事の表層しか見えていない港区民は困ります。我々は失望しながら魔地、港区をあとにしたのであった。

ちなみにその時、初めてスマートスピーカーを間近に見た子どもはいたく感銘を受けたらしく、家に帰るなり手近なザルや茶筒に熱心に話しかけるようになり、何やら不憫でなおかつ気味が悪く、しょうがないので港区民に恵んでもらった祝儀でGoogle Homeの安いやつを購入し神棚に安置してやりました。スピーカーは子どもの「おーけーぐーるぐる いぬのこえをきかして」などというかなりラフな命令文に対してもきちんと反応し、神棚からワンワンとかいう鳴き声が聴こえてきたりするので、Google Homeいい仕事すんなあ、と思いましたね。

ところで、Googleを「ぐーるぐる」と言うみたいな、子どものちょっとした言い間違いはかわいいものですね。たとえば、僕が子どもの話を無視してファイプロに興じたりしていると子どもは「しらんぷりんしないで!」と怒るのですが、しらんぷりんという語感がとてもかわいい。あとは仮面ライダーV3のことを「仮面ライダーブルースリー」というのもかわいい。二歳の子どもに『燃えよドラゴン』を繰り返し観せる情操教育ドラゴンの父と、V3に変身するときのテンションが高すぎて子どもにはなんと名乗ってるのかよく聞き取れないであろう宮内洋、そして東映特撮作品とゴールデン・ハーベスト映画の世界観がごっちゃな子ども、これら三人のコラボレーションによって生まれたかわいい言い間違いと言えるでしょう。