君のクラスの一番うしろ

君のクラスの一番うしろ

我が家にはアマゾンの精霊クルピラの子どもが住んでいるのですが、彼には将来よい仕事に就いて不自由のない暮らしをしてほしいもの。かくして彼を実地で鍛えあげるため、サブカルの総本山である中野ブロードウェイに連れていきました。

「あっ、あれはなに?」

「ははは、あれは超人墓場だよ。おもにキン肉マンのTシャツなどを売っているのだ」

「あっ、あれはなに?」

「ははは、あれはタコシェだよ。作家の中でも特に日陰者の本を中心に取り扱っているのだ」

などと実地で英才教育を行っていると、まんだらけのショーケースの前で子どもの足が止まりました。彼は突如として水面下から獲物を狙うイリエワニのようなギョロリ目となり「これがほしいんだけど?」と僕の父性を試すような口調でショーケースを指さすのであった。そしてそこにはなんと、子どもがいまAmazon Prime Videoで絶賛大熱中している『パーマン』に登場するアイテム、パーマンセットが売られているではないか。しかも15万円のプレミア価格。ブロードウェイでおもちゃを一個だけ買ってあげると息子に約束していたものの、さすがに30年前のボロいパーマンセットを15万の大枚はたいて一括購入するというのは本契約の適用外である。

「いや、こんなのじゃなくて、あっちのお店でキン消しを買おう。ひと山いくらで売られている木木人やマグニチュード1マンのキン消しを買いに行こう!」などと他のおもちゃに気をそらそうとするも子どもは戦闘態勢を解除せず、それどころか聖地まんだらけ店内で五体投地の態勢となり、緑色の肌を妖しく明滅させながら泣き叫ぶという精神攻撃をおもむろに仕掛けてきたのであった。あーっと、外面や社会的評価を気にする傾向の強いヒモロギ選手にとってはこれは辛い、しのげるのかーっ!? 中野ブロードウェイを観光中の外国人も二人を冷たい目で見ているぞーっ! 解説の外国人観光客さん、二人の戦いをどう見ますか?

「ルックアットディスグリーンボーイ。ヒーイズベリーサッド。ヒーキャントバイチープトイズ。ビコーズヒズファーザーイズルーザーアンドベリープアー。プアーマン シュッド ノット カム マンダラケ」

おーっと、解説の外国人観光客からも厳しい言葉だーっ! その批判が聴こえたのか、ヒモロギ選手、泣き叫ぶ息子を横抱きにまんだらけ店外に逃亡だーっ、いったいどこに……あっ、今入った情報によりますと、ブロードウェイ一階にあるガチャガチャで鬼太郎のキーホルダー的なものを買って子どもに与え、家に帰って行ったとのこと。時価にして100円程度の玩具でお茶を濁すというのは、果たしてどうなんですか解説の外国人さん。

「オー、ゴッド……」

ありがとうございます。あまりに唐突で悲惨な幕切れに言葉もないようです。

などと、行きずりの外国人観光客にディスられながらまんだらけを退散した僕。あまりレトロなコンテンツばかり見せすぎないようにしてゆきたい。