狐狸と毒蟲
- 2018.08.29
- 日記風
夏休みは宮城の実家に帰省していました。
実家はかつて2chで近隣に杉沢村があると噂されたことがあるようなモーストデンジャラス寒村なので、周辺には魑魅魍魎魔獣毒蟲の類がわりとフランクに跋扈しています。帰省中、どこかの2歳児が祖父の凡ミスにより行方不明になるもスーパーボランティアに発見されるというニュースをテレビでやっていましたが、それを観たここらの住民は
「ああ、こりゃ神隠しじゃのう」
「懐かしいのう。昔はここらでもよくあったもんじゃ」
「こんなん天狗の神隠しでFAじゃ」
などと、異口同音に神隠し説を唱えていました。そして皆でそんな話をしていると、母がさらに
「そういえばこないだ狐に化かされたよ。○○さんから大量に油揚げを貰って、車で夜道を走っていたら一本道のはずなのになぜか帰れなくなってねえ(笑)」
と衝撃の民話的体験を突然カミングアウトするなどして、やはりこの寒村はおかしい。母も母で、夜更けに大量の油揚げを輸送するという行動じたいがそもそもおかしい。21世紀にもなって、なんで大量の油揚げを持って夜の山道をゆくのか……もうよい年なんだから夜は好きなテレビ番組「しゃべくり007」などを観ながらそのままおとなしく寝といてください。(ちなみに、道に迷ってパニクっている時にたまたま電話の着信があり、通話の相手に助けを求めたら普段の景色に戻ったとの由)
実家のまわりは狐狸のみならず毒蟲も多いです。
今月3歳になった息子のピラ助があまりに狂喜乱舞するものだから家族一同うれしくなってしまい、帰省中は毎晩花火と焚き火をしていたのですが、かような無計画な享楽の結果、お盆の送り火用の焚き木までも消費し尽くしてしまいました。そのため僕の父、つまりピラ助の祖父が裏庭で燃料となる木材を集めていたのですが、なにぶん寒村のことゆえ裏庭というかぶっちゃけただの山岳地帯です。かような魔地で木を切ったり割ったりしてハッスルしていたところ、近隣に巣があるらしいキイロスズメバチが激怒、うかつにも左手を刺されてしまいました。じつは数週間前にもハチに刺されていた父はアナフィラキシーショックを発症、全身に発疹があらわれ血圧が急低下し、なんかもうかなりフェータルな状態となり、救急車で搬送される仕儀となったのです。災厄の元凶となった僕たち一家はなんかちょっと申し訳なかったので東京に戻る日を一日ずらし、しかしずらしたところでこれといってすることもなく、その日の夜も花火を楽しむなどしました。
ピラ助は普段からトミカの救急車でよく遊んでいるのですが、帰省以後、救急車ごっこで搬送する患者はだいたい祖父ということになり、だいたいハチかカナブンかカブトムシに刺されてぼつぼつが出るという設定の肉付けがなされることとなりました。いいぞ、こういうものはディテールこそが大事なのだ。美は細部に宿るのだ。