エクスクロス 魔境伝説

非常に面白いB級娯楽映画でした。僕はかつて深作健太監督をBENTA深作とかいって侮っていましたが（cf.『キルビル』のエンドクレジット）、こんなに上質なB級映画を作れる方とは知りませんでした。大変失礼しました。陳謝いたします。

上質B級映画を構成するのはたとえば、思わず失笑せざるを得ないような設定だったり、誰かに話さずにはいられなくなるようなシュールな画だったりと、それらはなかなか計算して作れるものではありません。狙って作ると河崎実作品のようなあざとさが滲み、微妙な駄作に堕してしまうこともしばしば。そこへいくと、もちろん本作も狙ってやっている部分はあるとは思うのですが、そのあたりの加減が非常に良い塩梅でした。

僕が健太監督を高く評価するもう一つの理由は、なんか足フェチっぽいから。
そもそもこの映画のキーワード自体が「足」。アシカリ村を訪れた女子大生の脚を切り落とそうとする悪の村落共同体があって、彼らはいちいち「なんときれいなおみ足じゃー！」みたいなことを言っては女子大生の足をさすったりなでたり舐めたりからみついたり切り落とそうとしたりして、その度にスクリーンに映し出される脚のアップが妙に生めかしくて素晴らしい。さらに、突如グラップラー化する女子大生（鈴木亜美）が腰の入った回し蹴りを多用し、それがまたトルネードエロい。監督は回し蹴りという技の遠心力が生み出す回転のエロさを知っている。これはもう、健太監督を断固支持せざるをえない。

名監督の条件は足フェチであることと僕は考えていて、タランティーノは言うに及ばず（『キルビル』の無駄に長いユマ・サーマン足指リハビリ体操シーン、『デス・プルーフ』で映し出される数々の脚線美、『フロム・ダス・ティル・ドーン』に監督自ら出演し女優の足を嬉々としてしゃぶりまくる奇行等々）、トリュフォー、バーホーヴェン、あとは三池監督なんかもわりと足フェチの気があるんじゃないかと。要するに、出来る監督は足が好き！　ついでに言うと、監督じゃないけど僕も足が好き！　まあ、足好きな人にもいろいろ派閥のようなものがあって、僕は足の中でも緊張感と硬質なエロスを内包したくるぶし周辺をこよなく愛するくるぶし原理主義者なのですが、そういうことを話し始めると、超クールで超かっこいい僕のパブリックイメージに瑕がつくのでやめておくことにするぜ。俺は足も女もまるで興味がないんだぜ。俺が愛しているのはバーボンとマルボロと夜の海の静寂だけなんだぜ。

閑話休題。本作は「共同体の悪意にコテンパンにされる」というモロホシックなテーマを取り扱っているというだけで、僕はもうご飯三千杯くらいいけちゃうのですが、その悪の脚刈り村に、全くの別件で悪の狂人サイコ「レイカ」がやってきて女子大生を襲うというアイディアが秀逸。脚刈り族vs女子大生vsサイコパスという三つ巴状態。ガンダムでいうならZの後半戦的な面白さ。中盤以降は完全にレイカ（小沢真珠）のキャラクターの異常が脚刈り族の異常を凌駕してしまっていて、超巨大ハサミを引きずるレイカがチェーンソーを装備した鈴木亜美と戦うシーンなどは特に素晴らしかったです。

また、レイカが登場するたびに眼帯+ロリータファッション→ゴスロリ風ファッション→ドリフ爆発シーン風ファッション→未開の蛮族風ファッションといったように、容姿の知能指数がガンガン下降していくのも見ていて楽しい。彼女の倒され方も「混ぜ合わせたトイレ用洗剤を顔に噴射される」とオリジナリティに溢れていて、『妖怪ハンター』の「キンチョールでやっつけられるヒルコ」以来の心震える敵キャラ攻略法でした。塩素系洗剤の武器化か。なるほどね。映画のおかげで僕はまた一つ賢くなれましたよ。これでいつトイレで敵に襲われたとしても敢然と立ち向かうことができる。映画のおかげでどんどん強化されていく僕。映画ってマジ素晴らしいな。