ヤクザと憲法

ヤクザと憲法

やくざを扱った映画ですが暴力的なシーンはほとんどなく、怖いというなら組長の年不相応な若々しさが一番怖いです。悪魔的に若い。怖い、怖いよ……。

かの名作『ゾンビ』ではゾンビという不死の怪物の生態と、彼らに対抗しつつ終末社会をしたたかかに生き抜く人間を描くことによって「人間はゾンビより怖い」「人間ほど怖いものはない」ことを観客に強く印象づけたわけですが、本作は西成ヤクザの生態と、彼らがなすすべもなく四課の刑事や法律にこまされる様子を克明に記録することによって「国家権力はヤクザより怖い」ことを示した西成版『ゾンビ』、『西成・オブ・ザ・デッド』と言ってもよいのではないだろうか。いや、よくないか。よういわんわ。

部屋住みの若い衆に尚人くんといううだつの上がらない青年がいるのですが、彼のようないじめられっ子歴18年みたいな子がやくざ見習いをやってることに衝撃を受けました。やくざというのは不良だけでなく、反対方向のベクトルのアウトサイダーの受け皿としても機能していたんですね。

気になって調べてみると、そんな彼も撮影後に組の金を持ち逃げしたあげくコンビニ強盗で捕まり実刑判決、組からも絶縁されているようで……間尺に合わん仕事したのう……